9.相の安定性  stability

★安定性

気相とか、気液平衡とか、通常われわれの環境は、安定しているように見えます。しかし、突沸を防ぐために沸石を入れて実験をするとか、砂糖キビから取れた茶色の液を高温で煮詰め、温度を下げると、溶解度の差により白い砂糖だけが析出する 晶析 crystalization という操作では、不安定領域 metastable state が存在したり、あるいはそれを利用したりします。雨滴とか、雹とかは自然の中での不安定性により起きる現象です。
 下図の塗りつぶした領域が不安定領域で、binodal 曲線(気液平衡線)と dP/dv=0 (すなわち圧縮係数が無限大となる点で揺らぎが最大)であるspinodal曲線とに囲まれた領域が不安定状態の領域です。この領域の中である状態を任意にコントロールすることはできません。しかしながら、その極値の気液平衡は、通常観測されます。binodal の値も一定値と考えられこれを観測したいというのが、当研究室の狙いです。


★ メタノールのspinodal 曲線の測定

連続でメタノールを流しながら、昇温を止め、圧力を下げていくと、臨界点(3.ヒートポンプ参照)と同じく 散乱光のため、光が通らなくなります。これは、 dP/dv=0 に対応するので、上図のspinodal 点を測定したものと考えられます。この成否に関しては今後の議論を待たなくてはならない部分もありますが、われわれは、メタノールついて測定し、次図を得ました。